TOPに戻る

to be myself
〜 GALZOOアイランド・二次創作 〜

妄想対象:バトルノート。


私という存在は、まぁ、一般的には可愛くない部類に入ると思う。

名はバトルノート、という。女の子モンスターとしては上位の部類に入る存在。
艶を消した濃紺を基調として軍服をアレンジした服装は、格闘には少々不向きな裾の広いスカート。
日の光が無くとも輝きを失わない銀色の長髪は、女性のそれと言うよりはむしろ敵を威圧する風貌の一つ
として機能している。
戦闘ともなれば自陣を統率し、索敵、分析を得意とする。自分で言うのも何だが、参謀、軍師と
いった肩書きが程よく自分の存在を表せるものだろう。

であるからして、人に指示を出す場面のほうが圧倒的に多い。おまけに命令口調で、だ。
それは仕方が無いだろう。うずうずおどおどした奴の指示を真っ当に聞く奴などおるまい。いたとしたら
相当の馬鹿かお人よしだ。
特にここは我の強い女の子モンスターの集団だ。いかにレオが私を従える程の魔物使いといえども、
人一人の力で全てが収まる訳でもない。

だから、最終的にはレオの力で解決するにせよ、衝突と言うものは起こる。
例えばそう、今のような状況だ。


「ねこまたまた!奴の注意を引きつけるように撹乱する動きで!クスシは毒玉で牽制!36連射のハニー
 フラッシュを溜める隙を奴に作らせるな!」
「僕は」
「レオは、見守ってくれていればよい。
 万一の場合は、足元あるいは手先を狙え。その鞭で仕留めるのは難しいだろう」
「う、うん」

当たり前の指示だ。機動力に長ける者がそれを活かし、攻撃力に劣る者にも担える役目を推す。
ただそれだけのこと。

「にぃ……言われ……なくってもっ!!」

左右に軽快にステップを踏みつつ、レッドハニーの三叉槍を爪の腹で受け流すようにかわすねこまたまた。
槍を直撃させることを諦めたハニーがフラッシュを焚こうとすると、そこを逃さずクスシが毒球を口元に
ヒットさせる。
いいコンビネーションだ。後は奴が痺れをきらして槍を大振りした瞬間に、ねこまたまたが引っ掻きを
決めれば簡単に片が付く。

と、その時何を思ったか、完全に手持ち無沙汰となっていたまじしゃんが詠唱をはじめた。

「よーし、私も……っ!グレイトライ……」
「お前は動かなくていい。邪魔だ」

杖の先端に触れ、詠唱を途絶えさせて集まっていた光を霧散させる。
当たり前だ。ハニーには魔法が一切効かないからだ。

しかしその瞬間、ハニーがその不規則な詠唱に反応し、動きが僅かに鈍る。
それを勝機と見たのだろう。爪を鋭く伸ばしたねこまたまたが奴の懐に飛び込む。
雄たけびと共に、回転を効かせた猫手グローブが奴の胴体をざっくりと抉った……かに見えた。

「ふぅ……っ、あ!し、しまっ……」
『………あ、あいやー!』

詠唱の声に反応したとはいえ、元来魔法が効かないハニーにはそれが危険であるという意識は無い。
それが故にその微々たる反応は体制を崩すまでには至らず、ねこまたまたの跳躍にハニーは確実に反応した。
胴に深くひびが入ったが、毒々しい赤さを持つ陶器は完全に割れていない。
この状況、奴にとってみればフラッシュの避けられない位置にわざわざ獲物が来たも同然だ。

右手を翻し、腰に溜めを作って瞬時に狙いを定める。
それでもこれは接近戦だ。ねこまたまたと絡み合う標的に正確に当てるのは難しい。
が、手をこまねいているだけでは!

「ええいッ!飛扇ッ!!!」

がづっ!という鈍い音と共に、鉄扇がハニーのわき腹にめり込む。
扇がめり込んだ先から新たにひび割れが走り、それが胴体のひびまで達したとき、機械仕掛けのような断末魔と
共に辛くもハニーは崩れ去っていった。


「……ふぅ、何とかなった、か……」

完全に反応が無くなったハニーを確認して一息つく。
ただ、少しだけ重苦しい雰囲気がこの場を包んでいた。

これも性分なのだろう。
よせばいいのに、口だけは動いてしまう。

「馬鹿者が。効果が無いと判っているなら何故詠唱なぞする」
「だ、だって、自分だけ何もしないっていうのも……
 それに、目くらましくらいにはなると思って」
「今度モンスター図鑑を見るといい。
 ハニーの視覚は外見の目によるものではない。例え上位魔法の強烈な光と言えども
 網膜が焼きつくことは無いということだ」
「う……」

「何もお前が無能だとは一言も言っておらん。
 ただ、有能な才もTPOを踏まえて使わないと無駄なだけ、と言っている」

「ど、どーせ私は無駄ばかりしてますよ!判ってないわよ!
 何よ、レオの従魔になったの、最後のくせに!」

「っ……!!」

一番言われたくなかった言葉。勿論それが感情に任せた中傷だということは判っている。けど。
つい先日まで、形はどうであれイカ男爵の手足として行動していた私。
彼女たちの心境を考えれば、いつ言われても当然のことだった。

言葉を放った後に、しまったという顔をして口を塞ぐ彼女。
私も私だ。何も言い返せないでいる。ただ、一層重くなった空気だけがこの場を支配していくだけ。

「こら、まじしゃん」
「っ!!」

少しだけ、ほんの少しだけ怒った言葉使い。でも、レオの微笑みはいつものように柔らかく、
まるで子供をあやしつける親のよう。

「今、僕と行動を共にしてくれている人達は、みんな僕にとってかけがいのない存在だよ。
 誰が最初に従魔になってくれた、とかは関係無しにね。……判ってるよね?」
「で、でもっ」
「ううん、まじしゃんは判ってるはずだよ。今後の戦いが一層激しくなること。今まで通りに
 いかないかもしれないこと。だから、バトルノートがいてくれるんだよ。
 言う事は確かに厳しいけど、不条理な事、道理にかなっていない事は何一つ言っていない」

それを聞いたまじしゃんはしばらく俯いていたが、やがてゆっくりと首を縦に振る。
まじしゃんの頭にぽんと手を置いてゆっくりと撫でて、レオははにかみながら言葉を続ける。

「まぁ、僕がこの中で一番弱いんだから、こんな事言えた義理じゃないかもしれないけどね」
「ううん、そんな事無い……レオは、一番……強いと思う……」


「まったく、レオは女性の扱いが上手い」
「う」

またこのような憎まれ口を叩く私。頬を火照らせていたまじしゃんは、一転してこちらを睨んでくる。
返す返すも性分だと思う。判っているけど可愛くない言い様だ。

「……すまぬ、少々言い過ぎた」
「誰によ」

彼女のきつめな文言を辛うじて受け流す。

「皆に、だ」

私はそれだけ言うと、重苦しい空気から逃げるように踵を返してダンジョンの奥に進んでいった。



ダンジョンの探索から帰ると、熱いシチューが出迎えてくれていた。
シーフードとブロッコリーが香り豊かに彩るスープディッシュは、こちらの気分云々を抜きにして
食欲を掻き立ててくれる。

「となり、良いか?」
「……空いている」

あのようなことがあった手前、堂々と食事を摂るのは気が引けていた。
食堂の隅で黙々とスプーンを口に運んでいた私に、バルキリーが声をかけてきた。

「こちらの食事は口に合わないのか?先程からあまり進んでいないようだが…」
「いや、十分に美味しい」
「そうか」

周りは山の幸海の幸コンビがぱたぱたと掛け合っていたり、子供となっているカメ子にちょーちんが
ふーふーをしながらスープを飲ませていたり、微笑ましいやら騒がしいやらの光景が展開されている。
が、私の周りは、ただただ食器の金属音が鳴り響くだけ。

「……不思議な光景、だな」

そんな中、珍しく柔らかい微笑みを浮かべながらバルキリーが言葉を漏らす。
戦う為にいるような彼女が、だ。

「これだけの種族が一同に集まって集団生活を営んでいる。
 一人者同士ではいがみ合うしかなかった者達も、何故かここでは笑みを絶やさぬ。
 ……見ようによっては腑抜けと映るかもしれないが、やもりんを見る限りそのようなこともない」

「……言いたい事があればはっきりと言えばよい」

やれやれ、といった感じでバルキリーは頭をくしゃりと掻く。

「……色々あったが、何もお主一人で背負う事は無いだろう。
 一人で抱えて良い事は無い。頼るときは、皆でも、マスターでも遠慮なく頼ればよい」
「主(あるじ)からの情けならば、貰った事はある」
「そういう事を言っているのではない。無論、その……抱かれる、ということには深い意味はあるが。
 マスターはそのような繋がりより深いものを持っている。お前ともあろうものなら、それくらいは承知のはずだろう」

「やれやれ、知ったような口を聞くのだな」
「……伊達に付き合いが長いわけじゃない」

今日のバルキリーは、あしらい辛い相手だった。

言い返すような言葉が見つからない。全て正論だからだ。
それにその柔らかな言い回しをされては、わざわざ言い返して混ぜ返すようなことは出来ないというものだ。

俯いた私を余所に、会話に一区切りをつけたバルキリーがぷりぷりとした海老のむき身を口に運ぶ。
小ぶりな口でそれを咀嚼する横顔は健やかすぎるほど。本当に美味しそうに食べる。
本当に柔らかい表情をするようになった。それが誰のおかげであるかは、今彼女が発した言葉から
充分汲み取れる。
手刀を構えているときとはまるで違う、ただいるだけで母性が溢れ出るようなその仕草に、
女性としての羨望と、そして軽く嫉妬に近い感情を抱いた私がいた。

「……なぁ」
「ん?」
「どうすれば、お前のような女性になれる?」
「……んっ!?け、けほっ、こほっ」

小さく、上品に咳き込む彼女。
……やれやれ、むせ返る姿まで様になっているとは。

「……っ、んんっ!っ…!
 ま、まったく、何を言い出すかと思えば……!」
「ちゃ、茶化すな!私はこのような話で冗談を言えるほど器用には出来てはいない!」

「は、はは、すまなかった。
 ……しかし、まったく、最高位の司令官ともあろうものが、まさかこのような可愛い事を
 言うようになったとは……っ、くくっ」

口元に手をやり、くすりと笑われる。
不思議とそのような仕草をされても、苛ついた感情は一切起こらなかった。
むしろ恥ずかしさのほうがこみ上げてくる。

……あれ? 私、何と言った?
いや、それよりも私は今、赤面しているのか?
くそっ、これではいつもと立場が逆ではないか!

「しかし、やはり……ぷっ、くすくすくす……っ」
「わ、笑うな!もういい!」
「いや、今のお前は充分に女性と思うがな。後はマスターに、我らの主に全て任せれば良い。
 今のような感情を押し殺さずに……な」

何かはぐらかされたような言い草だが、私の顔は火照ったまま。
照れ隠しに、止まっていた手を動かして、シチューを頬張る。
ほくほくのじゃがいもが、美味しさ以上に温かさを私に伝えてくれたような気がした。

「しかし……その、なんだ。今の話は到底他の子達には聞かせられないな。
 雷太鼓が聞いたら何と言われていた事やら」
「う……うるさいっ!」



「レオ、いいか?」

鉄で打たれた扉を軽くノックすると、扉の向こうから『うん』と済んだ声で返事が返ってきた。
僅かな胸の鼓動の高まりを抑えながら、ゆっくりと扉を引く。

気まずいと言えば、気まずい。
今日の事は、なぁなぁで済ませてしまったと言っても過言では無いからだ。
でも、レオはいつものように柔らかく微笑んでくれる。
それだけで、どこか頑なだった心の内が少しずつ溶けていくような温かさを感じた。

「どうしたの?」
「あ、いや、今日の件、改めて謝っておこうと思ってな。
 私も大人気なかった。すまない」

目線が泳いで、ひとところに定まらない。
戦闘中とはうって変わって、おどおどしているのは私のほうだ。

「それなら心配ないと思うよ。
 大丈夫、バトルノートが思っているより、皆はちゃんとバトルノートのこと思ってるから」
「そうだろうか?」
「まじしゃんは結構意固地なところあるからね。
 でも、もし何かあったとしても、僕が何とかするから大丈夫だよ」

本当に不思議な人間だ、と心底思う。
最初に出会ったときからそうだった。このレオという男はいつもどこかおどおどびくびくしていて、
従魔であるはずの女の子モンスターに普通に文句を言われる、容赦ないツッコミを受ける、
振り回されるの三拍子。無論戦闘では頼りなく、そのくせモンスターの手から手駒であるはずの従魔を
庇う素振りまでする。

「……レオ」
「うん?」

でも、彼はいつも皆の中心にいる。一人が悲しむと彼も悲しみ、笑うときは皆で笑う。だから皆が
いとも簡単に従魔になる。温和な空間が、レオの周りに積み重なっていく。

「……レオは、何故そこまで私達にしてくれるのだ?」

純粋な問いだった。
私は従魔で、彼は魔物使い。だが、ここの船内はその枠をゆうに超えている。

ただ、レオがどのように応えてくれるかは想像に易かった。
そして、彼は期待通りの言葉を紡ぎだす。

「んー、そうだなぁ……
 困った子を見ると、助けたいと言うか黙っていられないと言うか、そんな気持ちになるんだ。
 そのまま僕が知らんぷりしていたら、その後どうなっちゃうんだろうって想像したら怖くなるからね」

自分は父親の記憶が残っていない。物心ついた時から戦場にいたからだ。
ただ、親とはこういうものかもしれないと朧げながらに感じていた。

「だけど、僕はそういう事しか出来ないから。
 自惚れかも知れないけど、バトルノートも、その……頼れるときは、僕を頼って欲しい。
 今日の事もそう。ああいう事くらいしか僕は引き受けられないから、その時は何だってするよ」

本当に優しい、そして真剣な目。
顔を上げていられない。頬が紅潮しているのが手に取るようにわかる。
らしくない。私がここまで感情を抑えられなかったことが今まであっただろうか。

気がつくと私は、レオの胸に顔を沈ませていた。

「優しいな……レオは。私には出来そうにも無い芸当だ……
 言葉を選ぶという事を知らぬから、つい憎まれ口を叩く。いらぬ誤解を受ける。
 まったく……可愛くないものだ、私というものは」

少しの間を置いて、レオの両手がゆっくりと私を抱きしめてくれた。
まるであやすように髪を梳いてくれるレオの手が、やんわりと私に温かさをくれる。
不思議と心が安らいていく感覚。意外にも、こういうのも悪くないと思っている自分がそこにいた。

「ねぇ、今の台詞自体が可愛らしいって言ったら……怒る?」
「……か、からかうな、レオ」
「本当に思ったことを言ったんだけど……」

そう言いながら頭を撫でてくれるレオ。
羽毛の中に身を任せるような心地よさと、少しだけの気恥ずかしさが同居する。
ふと顔を上に上げると、見事なまでにレオと視線が絡み合った。

「ほら、やっぱり可愛い」
「だ、だからからかうなと……!」

レオはそんな私に微笑みかけて、胸の中からそっと解きながら少し声を張って言った。

「ね、まじしゃんもそう思うでしょ?」

その声に反応したかのように、がたんっ、とドアの向こうから大袈裟な音がした。

……がたん?

な、何っ!?

「と、いうことだから、ね?」

困惑する私をよそに、レオはさも当然のように部屋のドアを押し開ける。
と、ごんっと鈍い音と、きゃっという短い悲鳴が同時に聞こえた。

「〜〜〜〜っ!」
「ご、ごめんね、ゆっくりと開けたつもりだったんだけど」

……そこには、黒衣の少女が部屋に向かって耳をそばたてていた……のだと思う。
赤くなったおでこを擦りながら、彼女はドアの影からひょっこりと姿を現した。心なしか涙目にもなっている。

「まじ、しゃん?」
「ち、ちちち違うわよっ!別にバトルノートが気になったとか、謝りそびれてたらレオの部屋に
入ってく貴方が見えたとか、部屋の中から私の名前が聞こてきたからつい詳しく聞こうとしちゃった
とか、そういうことじゃないんだから!」

マシンガンのように言い訳にならない言い訳を放つ彼女。
場の空気をいっぺんで混ぜ返すその攻勢の前に、私はただただ呆気に取られるだけ。

「え、えっと、どの辺りから聞いていた?」
「ほとんどはじめから……私が意固地だとか、その前辺り……」

まだどこか上の空な私をよそに、彼女は照れた顔を隠そうともせずにマシンガンを撃ち続ける。

「わ、悪いっ!?しょーがないでしょ、私こういう性格なのよっ!
 そ、それに、下手にレオに告げ口したりしようものならどうしようかと思ってたけど、
 そんな事言われたら怒るに怒れないでしょ! あーもぉっ、何でそんなに可愛いかなぁ!」

「私が……可愛い?」
「そーよ!今の顔、鏡で見てごらんなさいよ!すっっごくほっぺた赤くしちゃってるから!」
「……それを言うならお前も相当に赤いのだが」
「〜〜〜っ!」

照れているのか恥ずかしいのか、慌てふためく彼女を見ていたら自然と口元が緩んでいた。
今までこのように皆の心にまで触れることは無かった。指揮戦術には無用と思っていた。
でも、この雰囲気はどことなく心地よい。

「ぷっ……くすくすくすっ」
「……あは、あはははっ」

知らず知らずのうちに、二人は顔を合わせて笑っていた。
どことなくくすぐったさを残しながら、ただ笑い声だけが部屋に響いていく。

ひとしきり恥ずかしさを発散させてから、私はすっと右手を出した。
レオも、私も、それを望んでいる。

「……な、何?」
「改めて言うが、私もこの性格だ。これからも物言いは変わらぬと思うが、極力気をつける。
 すまぬが、今後もよろしく頼む」

握手を求められていると理解した彼女は、腰に手をあてて軽く溜め息をつく。

「……らしくないわよ、それ」
「かも、な。だが、私なりのけじめのつもりだ」
「……そっか」

躊躇いなくしっかりと右手同士が握られる。
視線も揺るがず、お互いをしっかりと見やる。わだかまり無し、の合図だ。

「私からも、お願いするわ。
 私だけでなく、皆がきちんと自分の長所を引き出せるようにしてくれるのが貴方だものね」

きゅ、と握った手に力が篭る。その瞳は真剣そのものだった。
そんな私たちを見て、レオは私たちを包むように二人の肩に手を添えて。

「仲直り、出来たよね?」

と、いつもの微笑み。
まるでおもちゃの取り合いで喧嘩をした幼い姉妹を取り持つように。
何か堪えきれないくすぐったさを感じて、私は素直に頷いた。

そんな私とレオを交互に見ながら、彼女はまた天邪鬼っぷりを発揮する。

「んじゃぁ、私からもけじめ。
 今日は……うん、今日はね、レオは貴方のもの。これで貸し借り無しよ」
「……いいのか? 他の娘だっているだろうに」
「だって、ねぇ? レオにこんなに色々構って貰っちゃって、我慢出来ない訳無いと思うし。
 それにあーんなに可愛いトコ見せられちゃったら誰だって身を引くわよ?」

僕はモノじゃないんだけどなぁ、というレオはこの際放っておいて。
……こういうのを照れ隠しというのだろうか。だとしたら極まりないが、少しだけの反撃。

「私としては嬉しいが、まじしゃんは我慢出来るのか?
 ……何なら、二人同時でも私は構わぬぞ?」

それを聞いた彼女の顔が、いや全身が、かーっと高揚する。

「ばっ馬鹿!私だって節操くらいは持ち合わせてるわよっ!
 そ、その代わり、明日は私だからね! 先約だからねっ!! レオ、いい? 判ってる!?」

どうやら彼女のマシンガンは照れが入ると連射スピードが上がるらしい。しかも威力まで倍増している。
私が云々言っているときより恥ずかしい事を、勢いに任せてさらっと言う彼女はある意味凄いのかもしれない。

「ぷっ……あははっ、だそうだ、レオ。お前も大変だな」
「そんな、今に始まった事じゃないし……そ、それに、その、色々と嬉しい、かも」

……。
まじしゃんにしてやったりと思ったが、やれやれだ。
どうしてこの魔物使いは、こうまでして表裏が無いんだろうか。
いや、ここで話をレオに振った私がどうかしていたんだろう。

「あー、まったく! これ以上ここにいても二人の邪魔だし! 恥ずかしいし!!
 それじゃ、私はこれで!」

依然として真っ赤な顔を隠すように、まじしゃんは背を向けて部屋を出て行こうとした。
しかし、最後に振り向きざまに、ドアの向こうから半身を乗り出して一言放つところが如何にも彼女らしい。

「いい? ちゃーんと抱かれなさいよっ!?
 私が身を引いたんだから、これで何もなしとか勘弁してよねっ!!」

ばたん、と乱暴にドアの閉まる音。
……やれやれ、これではどちらが恥ずかしいんだか判らないというものだ。


「……行っちゃったね」
「……ああ」

苦笑いは私だけではないらしい。
だが、彼女に滅茶苦茶に混ぜっ返された空気が全て気恥ずかしさに変換されているおかげで
お互いに視線が泳ぐ。

ほぼ同じタイミングで、私とレオの喉が鳴る。
抱く、抱かれる、という衝動が身体のあちこちを火照らせていく。ごくり、という唾を飲み込む音ですら、
次の火照りを誘うものでしかなくて。

「で、ど、どうする?
 彼女の言い分だと、そ、その、今宵レオは私のもの、ということになるが」
「……謹んでお受けいたします」
「……そ、そうか」

どこかぎくしゃくとした会話が、危ういところで成り立っている。
……というか、今の台詞、相当に恥ずかしい。今頃になって気がつく。何かペースを乱されている気がしてならない。

「で、では、少し向こうを向いていてくれ」
「え?」
「ば、馬鹿者……っ、服を脱ぐのにまじまじと見られては……は、恥ずかしいではないか……!」

初めてではないというのに、気恥ずかしさが先行して動揺が隠せない。
これならば、余程前のほうがスムーズに事を運べたはずだ。

「あ、でも……せっかくだから、脱がしたいかも」
「な、何を恥ずかしいことを……っ、んっ!!!」

いきなりの接吻。
それどころか、すぐにレオの舌が私の唇をくすぐり、口腔に割って入ってくる。

「んむっ、っ、んぐ……っ、ちゅ、んっんぅぅぅっ!!」

私の中を蹂躙する動きに舌を合わせることで精一杯。
するとどこかでかちゃりと音がして、直後にドレスのベルトが外される。
舌先が感じるぬめりと水音に半ば埋もれながら、ぷつ、ぷつとリズミカルにジャケットのボタンが外されていく。
無抵抗の衣擦れの音と共に、私の身を包むものは濃紺からシンプルな桃色へと変わる。
為す術無くスカートが床にふわりと落ちた後は、大人しいデザインの下着と膝上丈のソックスが辛うじて肌を隠すだけになっていた。

その最中でもひっきりなしに絡み合う舌と舌。
お互いに飲み干す唾液はほのかに甘く、その行為だけでも夢中になってしまう。
しばらく為すがままにされていると、ふとレオの舌が愛撫を止めてそろりと引き抜かれる。

不思議に思い薄目を開けると、それを待っていたレオと視線が絡み合う。
お互いに濡れた瞳。情欲を灯した色。鼻息が頬をくすぐる。溢れた唾液を拭おうともしない。
それはレオも私も同じ事。だから、レオが欲していることがなんとなく判る。

「ん……ふっ……」

舌をおずおずとレオの口腔に差し入れる。
レオにされたように内で舌を躍らせる。するとレオの舌がちゃんと応えてくれる。
しばらくすると舌が押し戻され、今度は歯茎の裏を舌先でくすぐられるような愛撫。
一舐めされる毎に背筋がぞくぞくするような感触に酔いしれていると、またレオの力が緩む。
だから、今度は私がレオの中で、同じように裏を柔らかくつついていく。

「くふぅ……ちゅるっ、ずっ、ぬる、んっ、ちゅ、ぢゅ、ちゅぅっ、ん!
 っ……んむ……ぁ……っふぅ……ぃ、ん、ぁ、っっ、っちゅ、んぐ、んんぅ!!」

同じ事をトレースして、最後に一つヒントを残す。舌を回すように絡め合わせてすっと引く。
そうすると私の中でまた同じようにレオの舌が踊る。
お互いがお互いの望む愛撫をする。ディープキスの名に恥じない、これ以上ないくらい柔らかく、熱く、
淫らなキスを愉しむ二人。
いつしか身体はこの上ないほどに密着し、布越しの感覚にもどかしさを覚えながら胸を合わせ、
太股にお互いの性器を感じあい、擦りつけ、体内の性欲を情熱の炎で更に燃え上がらせていた。
浅ましく溢れかえっている御陰(みほと)を隠そうともせず、私は身体をしならせる。

「は……ぁ……っ!」

何分、いや、何十分そうしていただろうか。
ちゅるんと音を立てて引かれた唇の先に、名残惜しそうに光の橋がかかる。
二人の息はこの上なく荒く、もうお互いがお互いの深いところを欲して止まない。

だけど、この際だ。今日は自分の情欲を余すところなく出してもいいだろう。
最初に抱かれた時は興味本位のところもあった。皆が抱かれる主(あるじ)とはどういうものかと。
だが、もうそのような所より更に高みに私はいる。今日は心の底からレオを欲しているのだから。

「レオ……そのまま、ベッドに腰掛けてくれ」
「え?何を……」
「いいから」

身体を絡ませながら、半ば強引にレオを座らせる。
その前にひざまずき、被せるようにして股の中に身を割り込ませる。

「その……たいしたことをする訳では無いと思うが、私も知識だけで経験はないのでな。
 何か間違っていたら、言って欲しい」

先程のお返しではないが、わざと金属を弾いてかちゃりと音を立てて、レオのベルトを外していく。
そのまま一気にズボンと下着を下げると、窮屈そうにしていたレオの強張りがぶるんと音を立てて目の前に現れた。

「……こ、ここまで大きいものなのか……凄く、男を感じるな、これは……」
「あ、あの、バトルノート、それって、もしかして……っ」

この期に及んで言い淀む言葉とは裏腹に、目の前のそれは時折ぴくぴくと震えながら刺激を待っているように見えた。
それに圧倒されながらも、私は吸い寄せられるように口を寄せていく。

「あ、あの、だめだよ、待って、バトルノート!」

すんでのところで身を引くレオ。
何故だ……私はレオのしたいこと、して欲しいこと、全てを遂げたいのに……!

「……レオは、嫌なのか?私にされることが」
「そ、そうじゃなくて、薬……!」
「……あ」

……薬?
そうか。
薬。レオが情事の際にいつも飲む薬のことだ。
これを飲んでいないと、確かにこれを口でするだけでも、先走りが溢れただけで私には毒になる。

「あ、あの、ごめんね? 雰囲気壊しちゃって」
「……ぷっ、あははっ、あはははははっ!
 だ、だめだな今日の私は……やはり情熱に流されるなど慣れないこをとするものではない」

ばつが悪そうに、ごそごそとベッドの引き出しから見慣れた小瓶を取り出すレオ。
コルクを抜くとふわりと甘い香りが漂う。くっ、と口に含んで喉を鳴らす。
傍から見ると滑稽な風景かもしれない。あるいはおあずけを喰らった猫、というのが私の今の状況だろうか。

「っん、ごめんね、面倒くさい身体で」
「いや、それが私たちの関係だ。
 むしろ薬一つで異種である私たちが睦ぶことが出来るのだ。感謝したいところだぞ」

レオはもう一回ごめんね、と言いながら、空きとなった瓶を引き出しの奥にしまう。
体制を崩したお陰で微妙に開く二人の距離。もどかしくなってレオの腿をくいっと引っ張る。

「その、続き」
「え?」
「だ、だからその、続きを……
 え、ええい、そんなに大きいものをぶら下げ……上向いてるけど……ってるくせに!」

わしっと腰を掴み、強制的に元の体制に戻す。
恥ずかしそうな声が上のほうから聞こえたが、それは私の心を更に加熱させるだけ。

緩やかに、しかし大胆に強張りに右手を這わせてみる。
手で扱くコツは掴んでいる。前と同じでいい。ただ……この大きいものを口に頬張るとなると話は別、の気がする。
しかも、しゅり、しゅりと扱いていると更に硬さが増していく。やはり男そのものなのだ、これは。

「ん……改めて見ると……やはり凄まじいな、これは……」

少し動揺した私を察したんだろう。レオが私の頭に優しく手をやりながら囁いてくれた。

「……その、いきなり咥えるとか、無理しなくていいから……な、舐めてくれるだけでも、ね」
「だが、それではその……ふぇ、ふぇらちお、にはならないだろう?」
「形なんて関係無い……と思うよ。
 多分、舐めてくれるだけですっごい気持ちよくなっちゃうと思うから」

確かに、頬張る前に色々と手でしたり、その、舐めたり……ということは知識の中である。
ただ、それは達するには物足りない刺激であるはずで……

「ね、お願い。バトルノートがしてくれるだけで、僕は嬉しいから」

でも、尻込みしているだけでは一つになれない。ならば、はじめの一歩から確実にこなしていけばよい。
綺麗に反り返るそれに、自然と顔が近づいていく。

「……んっ」

先端に、口付け。
見た目以上につるつるとした頭の部分。舌触りも滑らかで、面白い感触。
そうだ、境目や筋の部分が性感帯のはずだから、舐め上げるだけでも出来ることはたくさんある。
そのまま頭の部分を含み、そろりと舌を割れた先端に這わせる。くすぐるように上下させるとぴくりと強張りが反応してくる。

恐る恐る上目使いにレオの顔を伺うと、まるで女性のような甘く潤んだ瞳がそこにあった。
もっとして欲しい、という意志だ。その表情が私の情欲を再び駆り立てる。

自分の知識を総動員して、目の前の男性器と対峙する。
身体を支えるようにレオの太ももに肘を置き、右手でくいっと強張りを持ち上げる。
緩やかに手を上下させると、また強く強張りが震える。本当に骨が入っていないかと不思議になる程に硬い。そして熱い。
ひとしきりその震える姿を目に焼き付けた後、カリ首と呼ばれるその境目にまで舌を合わせる。

唾液は……飲み干さないほうが良い、と頭の中にインプットされている。男性のそれにまぶすように、潤滑油代わりにと。
それを実践する。段差の箇所をくまなく舐め取り、震える頂点にまた口付けをして、自分の口の堰を切った。
口内に溜めていた唾液で透明な色に濡らされていく男性器。やがてそれは竿をゆるゆると握る手のひらまで及んでいく。
口元からぴちゃぴちゃと、そして根元からにゅちゅり、と艶かしくいやらしい音。
舌を蠢かすたび、右手で揉み込むたびに押し殺しきれない嬌声がレオの口から漏れてくる。

「っ……っ、くぅ……っ、だ、だめ、それ……っ!」
「んぷ……ちゅっ、んぅ、くふんっ、んっ、んっ……!」

一度亀頭から舌を離し、竿の筋にあたる部分を舌から上へとゆっくりと舐め上げる。
レオの精液がここを通る、ここを通って飛び出すと考えてしまうと自然と舌の感触に熱が入り、
自分の膣中までもがその感触を思い出してじくじくと疼きだす。

「んん……っ、ふくぅっ! っは、れ、レオっ!」

気付かないうちに差し込まれたレオの足。私の花弁をショーツの上から強めに擦ってくる。
下着を食い込ませるような苛烈な刺激が膣中の疼きを僅かに和らげる。しかし溢れた蜜が更に中と外を疼かせる。

「……こ、これくらいは、反撃……させてよね……?」
「れ、レオっ……これ、これくらい……などと、いう、範囲では……きゃ、ふぅっ!」

指先がクリトリスと呼ばれる秘芯を見つける。先程とはうって変わってこねくるような足の動き。
クロッチの部分が僅かにずらされて直接の刺激を受ける真珠。太股でお互いを擦り合わせたあの感触が
何倍にもなって甦ってくる。

「れ、レオ……っ! ん、むぅ!!」

もう、頭の先端まで蕩けそうだ。自分の知識より感覚が先に立つ。
何の躊躇いもなく男性器を口に含む。僅かな男性の味と苦しいくらいの圧迫感が口腔を刺激する。

「んん……ぐぅ……っ、っん!」

うっすらと目を開けてみると半分も飲み込めていない。けど、それがどうという段階ではない。
僅かに躊躇っている間にもレオの手はフロントホックをいとも簡単に外し、露になった乳房を揉んでくる。
荒々しい愛撫の中でも弱点の突起を外さないその手のひらが一層私を追い詰めていく。何時の間にか
上り詰めそうになっている身体に身を任せたくなる。

その衝動を振り払うように、私はそれを吸い上げる。

「んっ、っぐ……っ!ちゅ、ん、ちゅ、ぢゅ、ぢゅぅ、んぐ……!」

ぢゅぷ、ぢゅぷという音がどこから聞こえてくるか判らない。
快楽を身体全体で享受する自分をごまかそうと相手を刺激するのは二人共同じだ。
前戯というものが極まればこうなるのだな、と冷静な自分が判断する。しかしそれは身体が受ける快楽とは
何も関係がない。むしろただ溢れんばかりの情欲に流されていくだけ。

「ば、バトルノート……っ、も、もう……」
「んぅ、ぅぅぅっ、くふっ、っぁ……!」

レオの声が変わったのは、ただシーツを掴むだけだった左手をそっとレオのふぐりに添えた時。
精液の溜まり場をゆっくりゆっくりと揉み解していくと、腰全体がびくびくと震えてくる。

「っぷ……レオ、ここは…そんなに気持ちいいっ、のか……?」
「〜〜っ、っ……そ、そう……だから……!!」

なりふり構わず肯定してくれるその様子が愛おしい。
その声をもっと聞きたくて、右手、左手、唇、舌、全てを使って揉み、吸い付き、舐め上げた。

「んっ、ぢゅ、ぢゅうぅぅっ!! っく、っぷ、んっ、んっ、んっ!!!」

せり上がる感覚を我慢してか、胸をぎゅぅっと胸を掴まれる。足は指先まで痙攣している。
だが、いくら乱暴に扱われようとその愛くるしさは変わらない。

「あ……あっ……!! だ、だめ、出そう……っ!!」

私は本能のまま、唇を窄めて舌を強く押し付ける。

「んっ、っちゅ、ちゅる……っぢゅぶっ、ぢゅぅ………っ!!」
「だ……だめ……離れて……っ!」

……違う。だめ。離れては、だめだ。

飲んでみたい。
好奇心だけじゃない。レオの全てを受け止めたい。

一生懸命、上目使いに目で訴える。ずるりとぎりぎりまで引き抜いて、尿道口を下でくすぐりながら。

出していい。ここから出していいから。
ここから出る精液を、私は受け止めたいから。

「っく……っ……!
 こ、このまま、出すよ……っ、いい、の……っ!?」

ぐぷ、と音を立てる。極限まで飲み込む。そして吸い上げる。それが肯定の合図。
レオの右手がシーツの上で踊る。思わずその手を左手で取り、指を絡ませあう。
強く握られる指、手、胸。頬にまとわりつく髪も構わずに、私は顔を、舌を上下させる。
やがて最後の枷を引きちぎり、男性器がびくっびくっと私の中で震え上がって。

「っ、ああ……ッ!!」

一際大きい嬌声とともに、レオの男性そのものが、爆ぜた。

「んっ、んんぐぅ……っ、んんんんっ!!」

喉の奥に叩きつけられる精子をそのまま飲み込む。
じわりと広がる苦味。まとわりつくような感触。だけど、これがレオのものと思うとそれすらも愛おしく感じる。
何せ、声を震わせ、身体を震わせ、私の口に身を任せ、レオが快楽に酔いしれているのだ。

「ぁ……っ、バトルノート……っ、の、飲んで……っ!」

放出が、まだまだ止まらない。
舌の上でびくびくと精管が踊る。飲みきれない程の量が口の中に広がる。だが、一滴も零したくない。
唾液と絡ませ、喉を鳴らす。じわりと温かいものが私の中に流れ込んでくる。

「……っく………っ、っ……!」

とくん、と最後の放出。
口に残る残滓を飲み下す私の喉が、名残惜しそうに音を立てた。
ちゅるりと音がして、唇から糸を引きながら男性器が離れて行く。

「はっ、はぁっ………っ、んっ、はぁ……っ」
「……っ、ふ……ぅ、んっ……」

二人の荒い息使い。絡めた指はきつく握られたまま。
左手はそのままにもう片方の脇をきゅっと抱きしめられて、私たちはもつれ合うようにしてベッドに倒れこむ。
吐息はそのままに、ひしと抱き合う形。

そして、余韻を残した唇が、自然と重なり合う。

「……っ!だ、だめだっ、レオ!」
「あ」

次の瞬間、私は気持ちよさを跳ね除けるようにレオを押しのけていた。

「バトル……ノート?」
「だ、だめだ、レオ……したばかりだから、まだ……そ、その、きたな……っ」

そう、まだ余韻が残っている。レオのものを頬張り、舐め、飲み込んだ余韻が。
今唇を合わせたら、間接的にレオは自分のものを唇に触れさせることになるだろう。
だから、理性を総動員させて唇を拒絶する。懸命に目で訴える。

だが、レオはそんな私の事などお構いなしとばかりに優しく微笑んで。

「なんだ、そんなこと」
「そんなこととは、っ、んう!」

再び唇を合わせてくるレオ。私の頭を抱え込み、腰を抱いて逃れられないようにしながら。
僅かな抵抗も空しくするりと舌が挿し込まれ、口腔に残った残滓までもが絡め取られる。

どうして、と考える前に快楽で意識が彼方に飛ばされる。
ちゅく、ちゅくといった水音が全てを焦がしていく。

「っん……っ、はぁっ……れ、レオ……」
「……ん、っ……あ、あは、ちょっと苦い、かな」

私に覆い被された格好のまま、レオは下で柔らかくはにかんで喉を鳴らす。
されてはいけないと思った事をそのままされ、しかも口付けがもたらす快楽の細波に流された自分。
頭の中が軽くパニックになる。

「そ、それはそうだろう……そ、その、レオの……それ、が、まだ……
 ええいっ、何故そのようなことが判っていながらキスなど……それもあのように濃いものを……っ!」

「……ん、でもさ」

ふわり。
頭を撫でられる感覚。
しどろもどろになる私に言い聞かせるように、レオは優しく手櫛で髪を梳いてくる。

「飲んで……くれたんでしょ?」
「……っ」
「バトルノートが飲んでくれたんだもの。汚くなんてないよ。
 ……それに、ちょっとは興味あったし」
「……なんだ、それは」

髪を梳く仕草を続けながら、ばつが悪そうに目線を逸らすレオ。
れているのか、その口調までもが段々と尻すぼみになって。

「……あ、その、自分のが、どういう味かな……って」

「……」
「……」
「……ぷっ、あは、あははははっ!」
「わ、笑わないでよ! 結構真剣だったんだから!
 そんな、いっつも普通に口に咥えられて、しかも飲んでくれるとか……う、嬉しいけど、それって
 苦いって言うし、やっぱりみんな無理してないかなとか……す、少し心配になって……!」

今度はレオがしどろもどろになり、私の腕の中でうろたえる。
しかし、私は目の前の主がここまで無垢であることが可笑しく、そして嬉しかった。

「あ、あは、あは……っ、す、すまぬ、ここまで笑うつもりは……っ」
「……もう……ちょっと笑いすぎ……」

「……っ、でも……な、レオ……」
「え……っ、ん!」

嬉しさを態度で表そうとする。と、自然に唇を重ねている私がいた。
ついばむようなバードキス。唇の隅々まで余すところ無く私の痕をつけていく。

「っ、ちゅ、んふぅ……っ、んう、ちゅる、くちゅ、ちゅ、ん……っ
 っ、ん……っ、ふぁ……っ……ん、ん、んっ、んふ、っ……んぅ!」

ちょんと出ている舌先が擦れ合う度に、嬉しさがぴりぴりとした気持ちよさに変換される。
唇の感覚に負けないように、息苦しさに構わずに身体をこれ以上ないくらいに密着させる。
薄く、だがしっかりと筋肉のついたレオの胸板に私の胸が押し返されて形を崩す。

改めてレオという人間を感じる。
不器用だが純粋で、優しく、いつも微笑み、私たちの事を考えてくれるレオ。
このような人間を主とし、私も、皆も幸せだと常に感じる。

そして今、ここまで主と繋がり、時間と感覚を共有している私自身が何よりも嬉しい。

「っは……っ」
「……っ、ん」

長いキスは何回目だろう。その度に別れる唇同士が名残惜しいように透明なアーチを作る。
だが、それは当然次のステップへの架け橋となる。
しっかりと抱き合い、見つめ合う。次の言葉は、もう決まっている。

「レオ……抱いて欲しい」
「……うん」

体を入れ替えられ、ベッドに自分の身体が沈む。
穏やかな目で頷いてくれるレオ。それが肯定の証。そっと私の身体に触れてくれる。

肩に引っかかっていただけのブラジャーを脱がされ、べとべとになっていたショーツをするりと引き抜かれる。
少し腰を浮かせてその行為を手伝う私。下着との間に糸を引く私の愛液。一コマ一コマがくすぐったいような
恥ずかしさとなり、更に次の行為を期待させてくる。
肌はこれとない程に上気し、恥毛は今までの行為でしっとりと濡れ、朝露に濡れる若葉のように輝いている。
そんな私をまじまじと見つめてくるレオ。上から下まで、彼の視線が私を焦がしていく。

「こういうと陳腐かもしれないけど……ごめん。きれいだ……ってしか、言えないや」
「……馬鹿……素直に嬉しい……」

何十回目かのキス。身体の火照りがまた一段と上昇する。
いつしかレオも服を全て脱いでいた。一度放出を経験したはずの男性器も、すっかりと勢いを取り戻している。
もう、このまま貫かれてもいい。いや、すぐにでも貫かれたい。

だが、その柔らかい微笑みを崩さずに、レオは私に囁いて。

「……ね、バトルノート。
 ちょっとだけ……特別なことをしても、いいかな?」
「……っ、なんだ……あまり焦らすな、レオ……」
「大丈夫、いっぱい気持ちよくなると思うから」

そう言うとレオは一度私の上から退いて、ベッドの下の引出しを物色する。
先程レオが飲んだ薬瓶とは違う液体。ファンシーな瓶に見覚えはあった。だが、それは幾分場違いなもので。

「……愛情、薬? そんなもの使わなくても、私は……」
「ううん、飲んでもらう訳じゃないんだ」

かちりと音をたててガラス製の栓が抜かれる。
それを私に飲ませる訳でもなく口に含む訳でもなく、レオはそっとその瓶を傾けた。

瓶の口が示す先は、私の身体そのもの。

「ひ、ぁ……冷た……っ!」

とろり、と桃色の液体が胸元に落ちる。それと共に果実のような甘い香りが立ち込める。
僅かに粘り気のある液体を更に2、3滴落とすと、レオはそれを身体に染み込ませるように胸全体に広げていく。
薬のおかげで摩擦が薄れたレオの指先が乳首を掠めると、まるで電気が走ったかのように全身が跳ね上がる。

そうか……これは、ローション代わりに、この薬を……!
しかも、これは元来私達女の子モンスターの感情を昂ぶらせる薬……それが本来の力を発揮するならば、まさか……!

「……っ、くぅ……っ! れ、レオ……っ!」

そう、全てが媚薬になるはずだ。
この甘い芳香。身体を艶めかせる色立ち。肌から徐々に染み込んでいく薬液の主成分。
全てが私を狂わせる。より愛おしい主の為、淫らな身体へと。

そうしているうちにも、レオは更に私の身体に液体を迸らせる。
鎖骨に、二の腕に、臍に、腰に。薬を塗られた箇所が甘く疼き始める。全身が性感帯になっていく。

「はぁ……はぁっ、はぁっ、だ、だめだ、レオ、レオ……っ!」

数分後、全身をデコレートされた私が出来上がった。
僅かに閉じた太股はふるふると震え、私の大事な箇所をガードするその仕草も説得力が無い。

無論、そのガードも根拠は弱いもの。
触られたくないのではない。今の状態でそこに触られたらどうなるか、怖い。それだけの話。
現に薬はその付け根にある茂みにまで塗り込められている。瓦解は時間の問題だ。

「……凄い……こんなになるなんて……」

身体はわななき、乳首は硬くしこり、吐く息は絶え絶えの私の姿。
それをうっとりしたような目で私を見るレオ。その目線ですら私の中で快楽になる。

「ばっ、馬鹿……レオ、わかってやっている……のだ、ろう?」
「うん……わかってた。けど……なんか、目の当たりにするとすごいって言うか……
 バトルノート、凄く綺麗で、えっちで、てらてらって輝いてる」

ごくり、とレオの喉が鳴る。
レオも興奮しているのだろう。男性器は上を向いたままに大きくなり、その存在を更にアピールしている。

「じゃ……始めるよ」
「あ、ああ……早く……」

レオは半分だけ私に覆い被さるような形で、唇を寄せてくる。
薬の効き目に驚いているのか、その仕草は慎重そのものだ。だが、私はそれを待っていられない。

「レ、オ……っ! ん、っ!」
「っ、むぐ……!!」

寄せられた唇に貪るように喰らいつく。刺激を欲しがる唇が、舌が、レオを無理矢理感じ取っていく。

「っぅ、ちゅ、ぢゅ、ぢゅっぅむ、んぐっ、んっっ、ふぅっ!!」
「……む、ん、ぐ……っ! っっ!! っん!!」

最初はその変化に驚いていたレオも、私の情欲に理性が絆されていくように行動が大胆になっていく。
次第に過激に舌を絡ませ、手は掬うように胸を持ち上げる。

「っぐ、ぁはぁっ!!」

それだけで秘芯を撫でられたような快楽が私を襲う。
一際高い嬌声を聞いて、レオは次第に手の動きを強めていく。
液体に濡れた膨らみは、抵抗するこをと知らずにその形を自在に歪められて。

「あ、あぐぅ……っ! んっ、はぁっ、れ、レオ、だめ、だめぇ……っ!」

右に左に形を変える手鞠のような胸。マシュマロのように艶やかなその胸の突起が、切なげに次の刺激を待つ。
薄目を開けると、わかってるから、と言わんばかりのレオの優しい目。

「っきゅぅ……っ!! あ、あ、あ、あ、ああっっ!!」

こりこりと左右の刺激。左、右、ひだり、みぎとリズミカルに乳首が摘まれる。
更にローションを塗りこまれるような刺激。時にその摩擦の少なさから弾かれるようにレオの指から逃げる乳首。
だが、それまでも強烈な刺激になって私を襲う。
その間にもレオは私に覆い被さってくる。鎖骨に舌を這わされ、うなじは吐息を間近に感じてわななく。
ローションがぬちょりと音を立て、二人の間に更に広がっていく。身体を密着させてそれを歓迎する私達。
レオの身体が私の中心に割って入り、既に無抵抗の両足がするりと開かれていく。

「っぁ……!」

途端、まるでぱくりと音を立てるように秘芯が開いていった。
中からとめどなく愛液が溢れ出す。そこに上体から流れ落ちたローションが加わって混ざり合う。
未だに直に触れられていないそこは、しかし何時達してもおかしくないくらいにひくひくとわなないて刺激を待ち続ける。

当たり前だ。可愛いと言われ、何度となく抱きしめ合い、何十ものキスを繰り返し、レオのものを頬張り、
挙句の果てにこのように狂わされては、最高の快楽を欲しないはずがない。

「だ……だめ……もう、おかしく、なる……っ!
 レオ……レオっ! 欲しい……っ! レオが欲しい……っ!!」

だが、真剣な目で、しかしどこか歯止めの効かない目で、レオはその要求を跳ね除ける。

「……ごめん、少しだけ……
 バトルノートがしてくれたみたいに、僕も、味見してみたい」
「っ、きゃぁっ!!」

ぐいっと腰が持ち上げられ、レオに秘所を覗かれるような形で足が宙を泳ぐ。
低俗な表現で言うとまんぐり返しという格好。恥ずかしさだけが身体に蓄積されていく。

「っ、や、だ、駄目だ、レオ……っ、んくっ!! きゃふぅぅぅっ!!!」

ぢゅる、と秘芯が蜜を吐き出す。レオの舌がそれを掻き出してくる。
わざと音を立てられているのではない。私の底から溢れ出す蜜が自然にレオの舌と絡んで最も淫らな音を醸し出している。
身体はこれ以上ないほどにレオの愛撫に反応する。吸われ、ほじられ、こくりこくりと喉を鳴らされ、私がレオに飲みこまれていく。

「んぐ、ぢゅ、ちゅ、ぢゅぅ……ん、ぺろっ、んっ、は……っ……! おいしいよ、バトルノート……っ!」
「や……っ、そのような、は、恥ずかしいことを言うなぁ……っ! く、んあッ! あああああッ!」

ぬにゅと音を立てて、さも当然のように私の秘芯はレオの指を迎え入れる。
そのまま中がこねくりまわされる。クリトリスは舌先で円を描くように刺激される。
溢れる愛液は留まるところを知らず、くの時にされた身体の胸元まで垂れ下がり、小さな水溜りを作ってしまう。

「んっ、んぐぅっ、あ、ああっ! や、や、れ、レオ、レオ……っ! もう……っ!」

レオの舌を中心に、全ての刺激が身体を極みへと押しやっていく。絶頂を知らせるように腰がびくびくと震える。
だ、だめ、もう、舌だけで……

「んぅ……え……っ?」

その瞬間、レオの舌がいきなり止んだ。
身体がふわりとベッドに戻される。だけど、私のそこは開いたまま。レオはそこに覆い被さるようにして身体を寄せてきた。

腰が、密着する。
入り口にあてがわれたレオのそこから、熱さがじわりじわりと伝わってくる。
艶かしく光る身体も、吸い尽くされないほど愛液を迸らせた花弁も、そして何より私自身が、この瞬間を待ち望んでいた。

「レオ……レオ……っ!」
「うん……いくよ……っ!」

ぶぢゅ、と滴が溢れかえる音と共に、焼きごてのような熱さを持ったレオの男性器が私の中にぬめり込んでくる。
頭の部分が入ったかと思った次の瞬間、一気レオの腰が前に押し出されて!

「っ、ああああああああああっっ!! は、っ、ぐぅ……っっっっ!!」

かすかな痛み。しかし、途方もない充足感。
ただ正常位で貫かれただけのはず。だが、今までとは比べ物にならない快楽。
私の中にみっちりと入ってくるレオの男性器。襞の一枚一枚が余すところ無くそれを受け入れる。

「はぁっ、はぁっ……っ、ぐ、っ、はぁ……っ!」

残る破瓜の痛みを押しやるように、そして気持ちよさを受け入れるように深呼吸を繰り返す。
そんな私の顔をレオは心配そうに覗き込んできた。
私をちゃんと感じてくれている、気持ちよさそうな目で。

……だめだ、そのような目で見つめられるだけで身体の芯が蕩けそうな程に熱くなる!!

「っく……バトルノート……っ、だ、大丈夫……?」
「……ん、そんな心配を……するな……っ。
 レオ……私を、感じてくれ……そして私を、もっと気持ちよく……高みへ……っ!」

純粋な、しかしこの上なく淫らな願いを聞き遂げてくれたレオは、ローションにぬめりながらも腰を掴んでくれる。
後は、二人が本能に従って身体を動かすだけ。

「……そんな可愛い事言われたら……僕、もう止まらないよ……っ!」
「うん……来て……くれっ、レオ……っ!」

極限まで引き抜かれ、ずん、と一突きされる。

「あ、はぁっ!」

ゆるやかに引き抜かれる時はぞわぞわとした疼きが腰から背筋に上っていき、荒々しく突かれると一気にそれが
身体全体に広がっていく快楽の図式。
抱かれていること自体の気持ちよさに身体を駆け巡る感覚が加わり、元から溢れそうだった快楽がスパークする!

「んっ、ぐっ、っあ、っ、ひ、くぅ、っ、んぅ、んんっ!!
 あ、かは……っ、や、む、胸、ぇ……!」

腰の動きが安定したと見るや、レオは手を胸に当てて荒々しく揉みしだいてくる。
ローションによって倍増したかのような気持ちよさが、下から競り上がる快楽といっしょにこだまする。
ゆっくりと、しかし激しい抽出。むにゅむにゅと形を変える胸。
ぬぢゅ、ぬぢゅという飛沫の音と、ぱんっぱんっと腰を打ち付ける音が耳を犯してくる。
レオに刺し貫かれる全てが快楽となり、私の身体は吹き飛ばされそうになっていた。

「っぐ、ぁ、ああっ、だめ……だめ、レオ……私、もぉ……っ!」
「……っ、いいよ、そのまま、いっても……っ」
「え、だ、だって、レオ、がっ……!や、きゃふっ、んあああああああっ!!」

まだ達してない……と言う前にクリトリスが摘まれる。
指の腹でこりこりと擦られ、愛液とローションが塗りたくられる。滑りの良くなったそこはぷっくりと膨れ上がり
嬉しそうに刺激を受ける。そこから腰が、身体が跳ね上がる!

「だ、だめ、だめ、レオ、レオ……っ!!」

ぢゅ、ぢゅ、ぢゅ、ぢゅにゅ、にゅぬっ、ぱん、ぱんっ! ぱんっ!
腰の動きが一層激しさを増して、私は、もう……!!

「き、ひぁ、ああああああああああああああああああっっっっっ!!」

びくん、びくん、びくんっ。
腰が跳ねる。頭の中が真っ白になる。きゅぅ、とお腹の中が締まってレオをきつく締め上げる!
身体全体で向かえる絶頂。レオはそれを、一杯に腰を突き出して男性器全体で感じ取っているよう。

でも、私だけ。
私の膣中には、まだ弾けずに熱く煮えたぎるレオのそれ。

「……イっちゃったね」
「っ、くぅ……、ぁ……っ」
「でも、止まれないから、僕……っ!」
「え……っ!」

くるりと世界が回る。向かい合った座位の形で抱えられる格好。
ローションで濡れたお互いの身体がぴたりと擦り合う。絶頂の余韻に浸る暇も無く、肩から、胸から、腕から、
鎖骨から、お腹から、レオの体温と共にじんじんとした痺れが身体を駆け巡っていく。

今、私は途方も無く淫らな顔をしているのだろう。絶頂に浸り、レオの身体に浸り、また新しい刺激に腰を
震わせているのだ。潤んだ目、流れ落ちる唾もそのままにしている口元。だからこそ、間近にあるレオを身体が欲する。

「ふぁ……っ、れ、レオ……」
「……んっ」

行為の最中のキス。これ以上ないくらいに私の中で大きくなっているはずのレオが、またびくんと反応する。
ひとしきり口腔の感触を愉しんだ後、レオは容赦なく、下から腰を突き上げてきた!

「っは、あ!! ひぐぅっ! だ、ら、らめ、レオ、私、わたひ、いまはぁ……っ!」

ずん、ずん、ずん、ずちゅ、ずちゅ、ずぢゅっ!
一度堰を切った快楽の感触が急激に呼び戻される。それに加え、座位という姿勢によって身体全体の摩擦がそのまま
快楽に置き換わる。乳首同士が擦れ合い、太股はレオの腰をしっかりと離さず、それだけで快楽の針が振り切れる!

「っく……っ、バトル、ノートの膣中、すご……い、熱い……っ!」
「ぃ、く、くぅっ、あ、ふゃあんっ! おかしく、おかひくなるぅっ!!」

溢れ出して止まらない愛液、レオのものを愛して止まない秘芯。いつしか腰は本能の赴くままにしなり、
円を描いてより奥へとレオの情欲を呼び込んでいく。
ひくつきの止まらない膣壁をごりごりと擦られる。快楽を逃がすまいと身体をきつく抱きしめられる。
もう二度目の絶頂などというレベルではない。気持ちよさで全てが弾け飛びそうになる!!

「ん、きひぃっ、っ、か、はぁ、あ、あ、あ、あ、あ、ああっ!! だめ……私も、とまら、な……っ!!」
「っく……ぁ……っ、出す……出すよっ、バトル……ノート……っ!!」
「っうんっ! れ、レオの、ぜんぶ、私のなか……にぃっ!! うけとめ、させ、てぇ!!」

ぎしぎしとベッドが歪む。汗と薬と体液でぐちゃぐちゃになった二人が最後の極みに向けて腰を震わせ、
お互いを突き、包み、擦り、締め上げ、交わりあう。

「あっ、あっ、あっ!! んくぁっ!! あ、ああああああっ!!」
「っく……ぐぅっ!!」

嬌声が響きあい、私は思わず抱きしめた腕に力を込める。ぎり、とレオの背に爪が食い込む。
それを合図に、レオは奥深くめがけて激しく腰を突き入れる。私の膣中に、子宮をめがけて全てを溢れさせる!

「っ、っ、くっ、出……る……っ!!」
「来て、きて……レオの、ぜんぶ、私に……っ!」

肉棒が震える。秘芯が締め上げる。
意識のうちか、あるいは本能の為せる技か。お互いがお互いの最高の快楽を引きずり出すべく性器を蠢かす。
途端、びゅる、という音と共に、全てが溢れ出した。

「っ、ああ!!」
「ひぅっ!!」

びゅる、どくんっ!!

「くひぃっ、っ、あ、あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!」

どくっ、どくっ、びゅる!
がくん、がくん、がくんっ!!

腰を震わせ、つま先までわななかせ、身体をぴたりと合わせて、打ち付けられる精液の感覚を享受する。

「っ、あ……っ、まだ、まだ……でてる……っ」

びゅる、びゅるっ……どくんっ……
同じように震える二人。最後の一滴までお互いの快楽を搾り取る。
抱き合う力は最後まで等しく、力強く、そして優しく。
そのままずっとレオの体温に抱かれながら、私はいつまでも情熱の余韻に浸っていた……



少しの間、裸のままにベッドでまどろむ。
これは私からのリクエスト。何故か今日は、すぐに行為の片付けをする気にはなれない。
そんな私に、レオはそっと腕まくらをしてくれる。その微笑みはいつまでも私の心を温かく包んでくれていた。

「……あのさ」
「ん……?」

やがて、ゆっくりとレオが口を開く。

「……バトルノートってさ……結構、情熱的なんだね」
「な、何を、そんなことは……っ」

「だ、だってそうじゃない、戦闘の指揮だってそうだし、その……火山の一件だってそうだし。
 それに、その、え、えっちの時……だって……」
「ばっ、馬鹿者! それは……単に、そちらのほうが気持ちよいというか、その……
 え、ええい、ここまできて女性の心も判らぬのか!!」

先程までの行為を反芻して、途端に顔が火照っていってしまう。
照れ隠しにぽかぽかとレオの胸を叩くが、それは本当に照れ隠しにしかならずに。

「あははっ、やっぱりバトルノートって可愛い」
「ちゃ、茶化すなと言って……っ、きゃっ!」

そのままの抱擁。
とくん、とくんとお互いの心臓の音が絡み合う。

「……少しだけ……みんなと接するときも、素直にね。多分、もう僕が心配することもないと思うけど」
「……ん……」

レオの胸の中で、こくりと頷く。
私はもう大丈夫。皆が、そしてレオがいてくれるから。
そんな安心感からか、すっと目を閉じるとこの上なく安らかな眠気が訪れる。
まどろみの中、レオはいつもと変わらない優しい微笑みを私に投げかけてくれた。



数日後、再び私は迷宮に入る。

「とっこーちゃん! いくら貴方といえどもそいつは硬すぎる! あとは……」
「わ、わかってます!!」

手首を返し、シルクハットの奴を体ごと薙刀で受け止める彼女。その動きは慎重だが、次の一手を把握している動き。
よし、後は!

「まじしゃん」
「な、何よ」

私の言葉に構える彼女。ううん、ここで私が下がっては駄目。だから……!

「……がんがんいこうぜ?」

「ぷっ、あはははっ、了解っ!
 みんな、どいて! はぁぁぁぁッ!! 白色破壊光線―――ッ!!」

とっこーちゃんが即座に左に飛ぶ。直後、全てを消し炭にする程の熱量がその空間を満たす。
あの時見なかった白の魔法は、遠く彼方まで伸びて行くようだった。

「ふぅ、流石に最上位の威力だ。凄まじいな」
「当〜然っ!」

ぱぁん、とハイタッチ。
……そう、こういう感じも悪くない。レオの下なら尚更、だ。

と、レオの肩を借り、袴についた埃をはたきながらとっこーちゃんがこちらを睨んできた。

「も、もぉ、当〜然っ! じゃないですよぉ!
 何なんですかあれは……危うく私も消し飛んじゃうところだったじゃないですかぁ!」
「あいや、すまぬ。まぁ新しい魔法の試し撃ち、というところだ。
 光系の最大呪文、これなら拷問戦士も何とかなるかも……な」

当面の最大の敵を引き合いに出す。しかしとっこーちゃんの表情は冴えない。
むしろ、心なしか涙混じりになっているような……

「……新しい魔法……いいですよね、レオ様に……成長……転生……
 う、うう、私は、まだ……」
「『あ』」

まじしゃんと私、そしてレオ。三人ともきょとんとした顔で見つめ合う。
しかし、それは一瞬の事。まじしゃんと二人、自然と笑いが止まらなくなる。

「ぷっ、くくっ、はははっ! ということらしいぞ、レオ」
「くすくすっ、まぁったく女泣かせなんだから。しっかりしなさいよ!」
「あぅ」

ばん、と二人でレオの背を叩く。我が主はとことんまでに我が主らしい。

かく言う私は、少しは女性として可愛らしくなったのだろうか? それは自分では判らない。
だが、戦闘の中でも時に和やかなこの雰囲気は、今までの何よりも心地よいものだった。


このページの素材を無断で転載することを禁じます。
Back To Top Page